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2018/10/11

プロジェクトアリストテレスを考える‐チームの生産性と採用の改善のために‐

プロジェクトアリストテレスを考える‐チームの生産性と採用の改善のために‐
Googleから発表されたプロジェクトアリストテレス。効果的なチーム作りについて大きなヒントが生まれました。しかし、ほかの場面、面接にも応用できるのではないでしょうか。今回はまず、プロジェクトアリストテレスの概要を知り、次回にその応用の可能性について考えてみたいと思います。

プロジェクトアリストテレスを考える②‐面接に応用する‐

プロジェクトアリストテレスを考える ‐いかに採用を改善するか‐

Googleは効果的なチームの特徴、つまりメンバーそれぞれの評価と収益性の高いチームの特徴を知るために、2012年にこのプロジェクトに取り組みました。

そして、「心理的安全性」が、効果的なチームに真に重要だと結論づけました。リサーチ結果によれば、これが高いチームのメンバーは、Googleからの離職率は低く、ほかのチームメンバーが発案したアイデアをうまく活用でき、収益性は高く、「効果的に働く」とマネージャーから評価される機会が2倍多い、という特徴がありました。

つまり、「このプロジェクトの目標は何か」といったごく基本的な質問をするといった場面でも、不安なく質問できるチームが「心理的安全性」が高い、ということです。また、最初にこの概念を提唱したエイミー・エドモンソン氏によれば、チームの心理的安全性を高めるために個人ができる簡単な取り組みとして、

① 仕事を実行の機会ではなく学習の機会と捉える
② 自分が間違うということを認める
③ 好奇心を形にし、積極的に質問をする


ということを挙げています。これらを通常の業務の中で実現できるようになれば、効果的なチームを作り上げる土壌が出来上がることでしょう。

そうした土壌を作り上げたうえでチームのメンバーの能力を発揮させることが重要となります。
しかし、このことはマッチングを図る面接でも変わりません。求職者が働く姿を面接の場でも想起できるように、求職者にとっての心理的安全性の実現を図ってみてはいかかでしょうか?

面接の場面での心理的安全性を実現させるために、まずはプロジェクトアリストテレスを理解し、チーム作りの場面で生かすことを目的に、心理的安全性やその他のチーム作りに重要な因子を導き出すために行ったことを見ていきましょう。

いかにして「心理的安全性」は導き出されたか

チームと言ってもさまざまに意味を含むため、ワークグループとチームの区別にまず試みました。前者は相互依存性が最小限な特徴を持ち、組織または管理上の階層関係に基づいており、メンバーは情報交換のために定期的に集まる場合があります。後者はメンバーが相互に強く依存し、特定のプロジェクトを遂行するために、作業内容を計画し、問題を解決し、意思決定を下し、進捗状況を確認し、またお互いを作業を行うために必要としています。

そしてメンバー間の関係に高い依存性があるチーム(そのように自認しているチーム)をリサーチの対象とし、最終的にメンバー数3~50名のチーム(中央値9名)を対象にリサーチを実施しました。

チームの効果性については、マネージャー、チームリーダー、チームメンバーそれぞれによるチームの評価と四半期ごとの売り上げノルマに対する成績の4つの指標を組み合わせ、総合的に評価しました。

リサーチの対象としたのは、エンジニアリング系のプロジェクトチームが115、営業チームが65、計180のチームで、業績の高いチーム、低いチームの両方が含まれています。そのうえでチームの構成(メンバーの性格的特性、営業スキル、年齢・性別なども人口統計学的な属性など)とチームの力学(チームメンバー同士の関係性など)のチームの効果性への影響を調べ、彼らを対象にリサーチが行われました。

リサーチは、まずチームリーダーを対象に彼らの考える「チームの効果性を向上させる要素」を調査し、さらに既存のリサーチデータを分析してチームの効果性に影響している可能性のある変数を特定しました。また、

① チームの力学:チーム内で異論を唱えることに不安を感じない
② スキル:自分は課題や障壁をクリアするのが得意である
③ 性格的な特性:自分は信頼のおける社員である
④ 感情的知性:他人が抱える問題には関心がない


といった設問に同意するかどうかを尋ね、在職期間や職務レベル、勤務地などのメンバー属性に関する変数も収集しました。

こうして集められた大量のデータ項目のうち、何がチームの効果性に影響を与えているのかを突き止めようとしました。そして、
・成果に関する複数の指標(定性的な指標と定量的な指標)に影響を与えた因子
・Google社内の複数の異なる種類のチームで確認された因子
・一貫して確固たる統計的優位性を示した因子
これらの因子の特定を試みました。

その結果、真に重要なのは「誰がチームのメンバーであるか」よりも、「チームがどのように協力しているか」であることを突き止めました。影響する因子として重要な順に挙げると、「心理的安全性」、「相互信頼」、「構造と明確さ」、「仕事の意味」、「インパクト」だと述べています。

一方で、必ずしもどの組織でも同じであるとは限りませんが、「チームのメンバーの働き場所(同じオフィスで近くに座り働くこと)」、「合意に基づく意思決定」、「チームメンバーが外交的であること」、「チームメンバー個人のパフォーマンス」、「仕事量」、「先任順位」、「チームの規模」、「在職期間」といった変数はチームの効果性にそれほど影響していない、と明らかにしています。

つまり、個人が最高のチームを決定づけるのではなく、集団によって最高のチームを決定づけることができる、ということを意味しています。

 

効果的なチームのための重要な因子

重要な要素について、個別に見ていきましょう。
 

~「心理的安全性」~


対人関係においてリスクある行動をとった時の結果に対する個人に認知の仕方です。言い換えれば、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味しており、心理的安全性の高いチームのメンバーは、ほかのメンバーに対してリスクをとることに不安を感じていない、ということです。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、だれも自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります。
 

~「相互信頼」~


これが高いチームのメンバーは、クオリティの高い仕事を時間内に仕上げることができますが、一方でこれが低いチームのメンバーは、責任を転嫁するようになってしまいます。
 

~「構造と明確さ」~


職務上で要求されていること、その要求を満たすためのプロセス、メンバーの行動がもたらす成果を、個々のメンバーが理解することで、効果的なチームを作ることができます。また、目標を設定する場合、個人レベルかグループレベルかは問わず、具体的で取り組みがいがあり、かつ達成可能な内容である必要があります。
 

~「仕事の意味」~


仕事そのもの、またはその成果に対して目的意識を感じられることで、チームの効果性を向上させることができます。仕事の意味は属人的で、経済的な安定、家族、チームの成功、事項表現など、多岐にわたります。
 

~「インパクト」~


自分の仕事には意義があるとメンバーが主観的に思えるかどうか、ということです。個人の仕事が組織の目標達成に貢献していることを可視化すると、個人の仕事のインパクトを把握しやすくなります。

 

今回はプロジェクトアリストテレスの概要を紹介しました。

効果的なチームに重要な要素について見ていきましたが、この「心理的安全性」は必ずしも現在のチームだけではなく、将来のチームの一員を採用する場面、つまり面接にも応用することは可能なのではないでしょうか。

つまり、面接の場における求職者と企業の関係を、マッチングというゴールに向けたチームと捉えるならば、「心理的安全性」を考慮することで両者に納得のいく採用が可能になると考えることもできるでしょう。

その可能性と実践方法について、次回の記事で考えてみましょう。


プロジェクトアリストテレスを考える ‐いかに採用を改善するか‐

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